建設業許可業種の建築工事業(建築一式工事)
29種類ある建設業許可業種の内の建設工事業(建築一式工事)を解説いたします。
建設業許可業種における建築工事業(建築一式工事)の位置づけ
建設業許可29業種の中において、建築工事業(建築一式工事)がどのような位置にあるのか下記表にてご案内いたします。
建設業許可29業種の一覧表
建築工事業(建築一式工事)は工事の種類で言うところの一式工事に該当します。そして、建築工事業(建築一式工事)の取得が求められる建設業者は、原則元請業者とされています。
建築工事業 → 一式工事 → 原則元請業者が必要
建築工事業(建築一式工事)の一式工事とは?
一式工事の概念としての考え方が公表されていますので、まずはここを確認してみましょう。
一式工事の考え方(概念)
- 2 つ以上の専門工事を有機的に組み合わせて、社会通念上独立の使用目的がある土木工作物又は建築物を造る工事
- 必ずしも2 以上の専門工事が組み合わされていなくても、工事の規模、複雑性等からみて総合的な企画、指導及び調整を必要とし、個別の専門的な工事として施工することが困難であると認められる工事
大きくて、複雑な工事のような感じですね。
はい。明らかに一つだけの専門工事は
一式工事ではなさそうですね。
建設業でいう建築一式工事とはどのような意味合いになるのかを見てみましょう。
総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事
※建設省告示第350号
建築物を建設する工事の意味はわかりますが、「総合的な企画、指導、調整」の意味がわかりにくいですね。
当時の告示が出されてから長年が過ぎ、今ではこの「総合的な企画、指導、調整」という言葉は「実質的に関与」という言葉へ置き換わりました。しかし通達では意味合いは同じと捉えてかまわないとされていますので、同じものとして解釈できます。それではその内容を見てみましょう。
元請負人が自ら総合的に企画調整及び指導を行うこと
※建設省経済建発第379号
元請負人が行うという所がポイントですね。下請負人や他の事業者が行うわけではないという事です。
この意味をより具体的にすると、元請負人は下記を行うとされています。
元請負人は
施工計画の総合的な企画、工事全体の的確な施工を確保するために下記を行う
- 工程管理
- 安全管理
- 品質管理
- 工事目的物
- 工事仮設物
- 工事資材等
- 下請負人間について
- 施行の調整
- 下請負人に対して
- 技術指導
- 監督等
建築工事業(建築一式)における元請と下請の考え方
建設業許可は建設業法により定めれらていますが、この法でいう発注者、元請負人、下請負人の意味合いは世間で言われるものとは異なりますため、その考え方を整理してみます。
建築工事業(建築一式)の発注者とは
建設工事の最初の注文者
建築工事業(建築一式)の元請負人とは
下請契約における注文者で、建設業者であるもの
建築工事業(建築一式)の下請負人とは
下請契約における請負人
建築工事業(建築一式)の下請契約とは
建設工事を他の者から請け負った建設業を営む者が、他の建設業を営む者との間で、請け負った建設工事の全部又は一部について締結される請負契約
上記の流れを図にしてみると下記となります。世間一般の通称と異なる点と比較してみてください。
通称 | 発注者(施主) | 一次下請 | 二次下請 | 三次下請 |
建設業法上 | 発注者 | 元請負人 | 下請負人 | |
元請負人 | 下請負人 |
下請工事については、一括下請負禁止規定等との兼ね合いから、民間工事における合法的な一括下請負のケースを除いては、下請工事に関し、一式工事に該当する事例は、極めて少ないと国土交通省では考えられています。
一括下請は、公共工事及び一定の民間工事(多数の者が利用する一定の重要な施設等の工事)においては全面禁止、その他の民間工事においては、発注者による事前承諾がある場合を除き、禁止されています。
建築工事業(建築一式)においては、下請負人へ注文を出す建設業者が元請業者で、それを請ける業者が下請業者となるのが特徴ですね。
建築工事業(建築一式工事)の業種区分と考え方
建築工事業(建築一式工事)が建設業許可ではどのような区分や考え方とされているのかをご案内します。
建築工事業(建築一式)の建設業の該当業種
建築工事業
建築工事業(建築一式)の建設工事における種類
建築一式工事
建築工事業(建築一式)の建設工事の内容
総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事
建築工事業(建築一式)に求められる特徴
原則として下記に該当する事が求められます。
- 元請工事であること
- 下請け工事は該当しない
- 建築確認を必要とする新築及び増改築工事であることが目安
建築工事業(建築一式)許可で判断がつきにくい建設工事の区分と考え方
公表されている建築工事業(建築一式工事)の考え方の例を下記に記載します。
ビルの外壁に固定された避難階段を設置する工事は『消防施設工事』ではなく建築物の躯体の
一部の工事として『建築一式工事』又は『鋼構造物工事』に該当する。
古いビルの解体工事と、同じ敷地内に新たにビルを建設する工事を一体で請け負う工事は、「建築一式工事」に該当し、「解体工事」には該当しない。
材料費が請負契約に含まれていない場合であっても、注文者が提供する材料費も合算して税込み500万円以上(建築一式工事の場合は税込み1500万円以上)となった場合は、建設業の許可が必要です。
※建設業法施行令第1条の2
「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、建設業許可は不要です。
「軽微な建設工事」とは、工事1件の請負代金の額が、
①「建築一式工事」にあっては、1,500万円(税込)に満たない工事もしくは延べ面積が150㎡に満たない工事
②「建築一式工事以外の建築工事」にあっては、500万円(税込)に満たない工事です。
なお、この請負代金の額の算定にあたっては、以下の点に注意が必要です。
ア)2以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負金額の合計額
イ)注文者が材料を提供する場合は、その材料費等を含む額
ウ)単価契約とする場合は、1件の工事に係る全体の額
エ)消費税及び地方消費税を含む額
※建設業法施行令第1条の2
附帯工事の説明
許可を受けた建設業者が、その許可された業種の建設工事を請け負う場合に、その建設工事に従として附帯する他の種類の建設工事の事を「附帯工事」と呼び、この付帯工事を一体として請け負うことは差し支えありません。また、その際には主たる工事に関する建設業許可を有していれば足ります。
ただし、「附帯工事」(軽微な建設工事を除く)を請負業者が自ら施工する場合は、当該業種の資格等を有した「専門技術者」の配置が必要となり、また、自ら施工しない場合はその許可を持った建設業者により下請施工させなければなりません。(建設業法第26条の2第2項)
主たる工事の建設業許可は必要
付帯工事の建設業許可は不要
附帯工事か否かの判断基準
建設工事の注文者の利便、建設工事の請負契約の慣行等を基準とし、当該建設工事の準備、実施、仕上げ等に当たり、一連又は一体の工事として施工することが必要又は相当と認められるか否かが総合的に検討されるもので、主たる工事と当該工事との工事費の多寡によって定まるものではありません。
それぞれの工事が独立の使用目的に供されるものは、「附帯工事」とはいえないため注意が必要です。
附帯工事であれば一体として請け負っていいのね。
附帯工事であれば、許可を受けていない業種の建設工事であっても請け負うことができます。
附帯工事の注意点
500万円を超える附帯工事を施行する場合は、主任技術者又は主任技術者に相当する者を置いて自ら施工するか、専門工事の許可を受けた建設業者に請け負わせて施工させなければなりません。
- 石工事業者が石垣を築造するにあたって基礎部分の掘削やコンクリート工事を施工する場合
- 管工事業者が、既存の建物に冷暖房工事の配管をするに当たって、壁体をはつったり、熱絶縁工事をしたり、施工後に内装仕上工事をする場合
- モルタルの補修のための下地を修正することは大工工事に該当するが、この工事は左官の目的のための附帯工事であるため、大工工事業の許可を受けていなくても、左官工事業の許可を受けていればよい。
- 管工事(エアコン設置工事)の施工に伴って必要を生じた電気工事
- 屋根工事の施工に伴って必要を生じた塗装工事
- 電気工事の施工に伴って必要を生じた内装仕上工事(壁の一部貼り替えなど)
何が主たる工事になるのか、それによって取得する建設業許可業種が決まってきますね
- 建築一式工事のみの許可を受けている場合に、一棟の住宅建築工事を請け負うことはできますが、その工事内容をなす大工工事、屋根工事、内装仕上工事、電気工事、管工事、建具工事などの専門工事を単独で請け負う場合は、無許可営業となります。
土木一式工事及び建築一式工事の2つの一式工事は、他の27 の専門工事とは異なり、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物又は建築物を建設する工事であり、専門工事をいわば有機的に組み合わせて建設工事を行う場合を想定しています。土木一式、建築一式工事の許可を受けても、他の27 の専門工事の許可がない場合は500 万円以上(税込み)の専門工事を請け負うことはできません。
専門工事を単独で請け負う場合は、一式工事の許可のみでは無許可営業となるので注意が必要です。
そもそも建設工事に該当しない作業
- 除草
- 草刈
- 伐採
- 樹木の剪定
- 庭木の管理
- 造林
- 除雪
- 融雪剤散布
- 測量
- 設計
- 地質調査
- 調査目的のボーリング
- 保守、点検、管理業務等の委託業務
- 清掃
- 浄化槽清掃
- ボイラー洗浄
- 側溝清掃
- 造船
- 機械器具製造、修理
- 道路の維持管理
- 施肥等の造園管理業務
- 機械建設の賃貸
- リース
- 建売住宅の販売
- 社屋の工事
- 資材の販売
- 物品販売
- 機械、資材の運搬
- 採石
- 宅地建物取引
- コンサルタント
- 人工出し
- 解体工事や電気工事で生じた金属等の売却収入
- JVの構成員である場合のそのJVからの下請工事等
建築工事業(建築一式)の専任技術者の資格要件
建築工事業(建築一式)で建設業許可を取得するにあたり、一般建設業許可を取得するのか、又は特定建設業許可を取得するのかにより、専任技術者に求められる要件が異なりますので注意が必要です。
一般建設業で建築工事業の許可を取得する場合の専任技術者要件
学歴と実務経験を有する者(法第7条第2号イ)
- 指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者
-
- 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、高校卒業後5年以上若しくは大学卒業後3年以上の実務経験を有し、かつ、それぞれ在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者
学歴 指定学科の卒業 実務経験業種 卒業後の実務経験年数 高校 必要 許可の該当業種 5年以上 大学 必要 許可の該当業種 3年以上 - 指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者
-
- 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後5年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者
- 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後3年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者のうち、専門士又は高度専門士を称するもの
学歴 指定学科の卒業 実務経験業種 卒業後の実務経験年数 専門学校 必要 許可の該当業種 5年以上 専門士又は高度専門士 必要 許可の該当業種 3年以上
建設業法施行規則第1条で規定されている学科で、建設業の種類ごとにそれぞれ密接に関連する学科として指定されているものです。
建築工事業の場合の指定学科
下記に関する学科が該当となります。
- 建築学
- 都市工学
実務経験10年以上の者(法第7条第2号ロ)
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者
学歴 | 指定学科の卒業 | 実務経験業種 | 卒業後の実務経験年数 |
不問 | 不問 | 許可の該当業種 | 10年以上 |
国土交通大臣が認定した者(法第7条第2号ハ)
国土交通大臣がイ又はロと同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者
具体的には、下記の指定された国家資格者の事を指します。
建築工事業の専任技術者要件の対象資格(一般建設業)
- 一級建築施工管理技士
- 二級建築施工管理技士(建築)
- 一級建築士
- 二級建築士
- 建設業法施行規則第7条の3の第1号、第2号及び第3号該当
注意)上記の資格のみで要件を満たす場合と、資格+実務経験を求める場合があります。各資格要件(実務要件含む)については最新の建設業手引きで、ご確認ください。
実務上では要件を満たす国家資格を保有して、専任技術者になるパターンが多くあります。
※建設業許可の専任技術者要件を満たす国家資格の中には、実務経験も同時に必要とするものもあります。詳細は、最新の建設業許可手引の資格一覧リストで確認をしてください。
特定建設業で建築工事業の許可を取得する場合の専任技術者要件
建設業許可と特定建設業許可では求められる要件が異なるので注意が必要です。
建築工事業の専任技術者要件の対象資格(特定建設業)
- 一級建築施工管理技士
- 一級建築士
- 国土交通大臣が上記の者と同等以上の能力を有すると認めた者
注意)上記の資格のみで要件を満たす場合と、資格+実務経験を求める場合があります。各資格要件(実務要件含む)については最新の建設業手引きで、ご確認ください。