建設業許可における「営業所技術者等」について解説
静岡県で建設業許可を取得する際は、「営業所技術者等」の設置が必要です。従来は、専任技術者と呼ばれていましたが、2024年の建設業法改正により名称が変わりました。
「営業所技術者等」とはどのような立場の人なのかおさらいし、営業所技術者等になるための資格や配置技術者(主任技術者、監理技術者)との違いも解説します。
このような方に向けた記事です
- 営業所技術者等とは何かを知りたい方
- 営業所技術者等と専任技術者の違いを知りたい方
- 営業所技術者等と配置技術者(主任技術者、監理技術者)の違いを知りたい方
- 営業所技術者等になるための資格を知りたい方 等
営業所技術者とは?
営業所技術者とは、建設業許可を取得する際に営業所ごとに設置が義務付けられている技術者のことです。
建設業の許可業種に関する専門知識、技術、経験を有している人を営業所ごとに1名以上設置しなければなりません。そのために設置し、届出される人が営業所技術者となります。
営業所技術者と専任技術者の違い
営業所技術者と専任技術者は実質的に同じ意味です。
2024年に建設業法が改正されて、従来、「専任技術者」と称されていた人が「営業所技術者」に変わりました。
「専任技術者」という場合、どこに専任するのか? 営業所なのか、現場なのか? といった点が不明確でした。
そこで、「営業所技術者」とすることで、営業所の専任の技術者であることを明確にする意図があります。
営業所技術者と配置技術者(主任技術者、監理技術者)の違い
営業所技術者と配置技術者(主任技術者、監理技術者)は役割が明確に異なっています。
営業所技術者は、営業所に常勤して建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理を行う人です。
一方、配置技術者(主任技術者、監理技術者)は、建設工事の現場で、建設工事の施工の技術上の管理(施工管理)を行う人です。
原則として、営業所技術者と配置技術者(主任技術者、監理技術者)は別の人を選任しなければなりません。
ただ、一定の場合は、営業所技術者が建設工事の現場に赴いて、配置技術者を兼務することも可能です。
営業所技術者等とは?
「営業所技術者等」と「等」が付いている場合はどういう意味なのでしょうか?
建設業法では、「営業所技術者等」という表現は第二十六条の五に登場します。
次の一文です。
建設業者は、第二十六条第三項本文に規定する建設工事が次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には(中略)
建設業法第二十六条の五 (営業所技術者等に関する主任技術者又は監理技術者の職務の特例)
その営業所の営業所技術者又は特定営業所技術者について、営業所技術者にあつては第二十六条第一項の規定により当該工事現場に置かなければならない主任技術者の職務を、特定営業所技術者にあつては当該主任技術者又は同条第二項の規定により当該工事現場に置かなければならない監理技術者の職務を兼ねて行わせることができる。
この条文では、タイトル(条見出し)に営業所技術者等の記載がされており、本文において、その内訳として営業所技術者と特定営業所技術者について述べられています。このような記載より、営業所技術者等とは、「営業所技術者又は特定営業所技術者」のことを意味していることが読み取れます。
わかりやすくするために表にしてみましょう。
総称 | 各名称 | 兼ねられる職務 |
営業所技術者等 | 営業所技術者 | 主任技術者 |
特定営業所技術者 | 主任技術者 監理技術者 |
営業所技術者と特定営業所技術者の違いとは?
営業所技術者は、「一般建設業」で営業所ごとに必要とされている技術者です。
特定営業所技術者は、「特定建設業」で営業所ごとに必要とされている技術者です。
一般建設業と特定建設業とでは、営業所技術者になるための資格要件が異なっています。
特定建設業の方がより、高度な資格や経験が求められています。
ここでも表にして整理をしてみましょう。
技術者名称 | 建設業許可の種類 | 営業所ごとの要否 |
営業所技術者 | 一般建設業 | 常勤として必要 |
特定営業所技術者 | 特定建設業 | 常勤として必要 |
営業所技術者になるための資格
営業所技術者になるためには、大きく分けると次の2つの方法があります。
- 許可業種に対応する国家資格を取得する
- 学歴に応じて3年、5年、10年以上の実務経験を積む
一つ一つ確認しましょう。
許可業種に対応する国家資格を取得する
国家資格には、どの許可業種でも営業所技術者になれる万能の資格はありません。
最も汎用性の高い資格としては、「一級建築施工管理技士」がありますが、この資格でも、土木工事業(土木一式工事)や電気工事業、管工事業などでは営業所技術者になることはできません。
許可業種ごとに対応する資格が異なるので、営業所技術者になることを目的に資格を取る場合は、事前に調べることが大切です。
なお、国家資格によっては、資格を取るだけでなく、実務経験も必要になる業種もあります。
詳しくは、建設業許可の手引き等の国家資格等一覧を参考にしてください。
学歴に応じて3年、5年、10年以上の実務経験を積む
学歴や実務経験で営業所技術者を目指す場合は次の点に注意が必要です。
- 学歴とは、土木学科や建築学科等の学歴のことである。
- 実務経験とは、現場での建設工事関係の実務経験のことである。
学歴とは、土木学科や建築学科等の学歴のみを意味します。そのため、文系学科の大卒の方が営業所技術者を目指す場合は、学歴がないことになるため、10年以上の実務経験が必要です。
実務経験とは、現場での建設工事関係の実務経験のことで、雑務や事務といった仕事の経験は含みません。
また、特定建設業の「特定営業所技術者」になるためには、実務経験のうち、2年以上が指導監督的実務経験である必要があります。
指導監督的実務経験とは、元請けとして4500万円以上の建設工事を請負った現場での経験で、工事現場主任や現場監督者などとして工事の技術面を総合的に指導監督した経験のことを意味します。

大学を出ていれば建設業許可の学歴に該当するとは限らないんですね。



はい、どのような学科であるのかがポイントです。該当する学科は国土交通省令で定められているんです。



該当する学科で無かったら認められないのでしょうか?



学科では該当がなくても、類似学科として認められるものもありますので、建設業の手引きで確認をするとよいと思います。
大学卒業でも非該当学科では、建設業許可の上では学歴とされないことに要注意です。


建設業許可における営業所技術者の設置要件とは?
建設業許可では、経営業務の管理責任者の設置に加えて、営業所技術者等の設置が求められています。
営業所技術者等の設置要件のポイントは営業所に専任することです。
専任について、静岡県の建設業許可の手引きに記載があるので確認してみましょう。
その営業所に常勤(テレワークを行う場合を含む。)して専らその職務に従事することをいいます。従って、雇用契約等により事業主体と継続的な関係を有し、休日その他勤務を要しない日を除き、通常の勤務時間中はその営業所に勤務し、建設工事に関する請負契約の適正な締結及びその履行を確保しなければなりません。
建設業許可の手引き 「専任」とは
まず、営業所技術者の役割とは、「建設工事に関する請負契約の適正な締結及びその履行を確保」であることが読み取れます。
次に、営業所に専任するとは、その営業所に常勤して、平日の一般的な営業時間帯はその仕事に専念していることを意味します。手引き記載による裏付けとしては下記の4点となります。
- 営業所に常勤
- 専らその業務に従事
- 雇用契約書等により事業主体と継続的な関係
- 通常の勤務時間中はその営業所に勤務
現在では、テレワークでも常勤していると認められていますが、営業所技術者の住所と営業所の所在地が著しく離れていて、常識上通勤不可能の場合は、専任とは言えません。
また、営業所技術者の報酬や賃金が著しく低い場合も、専任と認められません。目安は、月額12万円以上であるかどうかとはされています。しかし、近年は最低賃金が毎年上がり続けていることと、そのような賃金状態で常勤とみなすのかは、事前に申請窓口へ確認してから申請の準備を進めることをおすすめいたします。


まとめ
建設業許可で設置が必要な「営業所技術者等」について解説しました。
専任技術者からの名称変更により戸惑う方も多いと思いますが、細かい変更点はあるものの実質的には従来の専任技術者とほぼ同じ意味です。
営業所技術者等は建設業許可を取得する際はもちろん、建設業許可を維持するためにも必須です。一日でも欠けた場合は、建設業許可が取り消されてしまう恐れがあります。
営業所技術者等に関して分からないことがある場合は、速やかに建設業許可に詳しい行政書士にご相談ください。
当事務所は、静岡県の行政書士と社会保険労務士の事務所であり、建設業者の建設業許可取得をサポートする専門家です。
静岡県内の建設業者様で、営業所技術者等に関してお悩みのことがあれば、どのようなことでもご相談ください。





