2024年4月1日から、建設業にも時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)が原則適用となりました。繁閑のある現場では、繁忙期・閑散期に合わせて所定労働時間を配分できる「1年単位の変形労働時間制」を検討する企業も増えています。
1年単位の変形労働時間制は、所定労働時間を年間で配分することで、対象期間(1か月超〜1年以内)を平均して週40時間以内となる範囲で、日・週ごとの所定労働時間に増減の変化をつけられる制度です。
なお、制度を導入しても、時間外労働・休日労働をさせる場合には別途36協定が必要になる点には注意が必要です。
この記事では、建設業における1年単位の変形労働時間制のポイント(シフト作成ルール/導入手続き/割増賃金の考え方)を分かりやすく整理します。
このような方に向けた記事です
- 1年単位の変形労働時間制とは何かを知りたい方
- 1年単位の変形労働時間制のシフト作成ルールを知りたい方
- 1年変形労働時間制を導入する際の手続きを知りたい方
- 1年変形労働時間制を導入する際の注意点を知りたい方 等
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建設業は繁忙期、閑散期がある
建設業の業種によっては、繁忙期、閑散期がある場合もあります。
例えば、屋外での塗装工事は、雨が降っているときはできないため、梅雨の時期は閑散期になりがちですし、気温が低い冬の時期も塗膜が乾きにくいことから、塗装工事ができないこともあります。
塗装工事以外でも、屋外で工事を行う業種はどうしても、季節や天候に左右されます。
雨天だけでなく、最近では熱中症対策で、猛暑の時期の労働時間も短縮せざるを得ないこともあります。
このような場合は、工事ができない時期は休みを多く取り、工事しやすい時に働いて稼ぐというスタンスを取ることも多いでしょう。
建設業の1年変形労働時間制
繁忙期、閑散期がある建設業の業種については、1年単位の変形労働時間制を採用することでより柔軟な勤務形態や事業運営に繋げることができることがあります。
1年単位の変形労働時間制とは、繁忙期は労働時間を長めに設定し、閑散期は短くすることで、1年間を平均して週40時間以内になる範囲で、日・週ごとの所定労働時間を配分できるシフトへ調整することができるというものです。
建設業で1年変形労働時間制を導入する際のシフト作成ルール
1年間の平均労働時間が1週40時間となるようにすれば、どのようなシフトでもよいわけではありません。
やはり、一定の制約が設けられています。
具体的には次のとおりです。
- 労働日数は(原則として)年間280日が限度
- 連続労働日数は6日が限度(例外として特に繁忙な場合、特定期間として12日を限度とすることができる)
- 1日の労働時間は10時間が限度
- 1週間の労働時間は52時間が限度
- 労働時間が48時間を超える週は連続3回までが限度
- 対象期間を3か月ごとに区分した各期間で、労働時間が48時間を超える週は3回までが限度
繁忙期はガンガン働いてもらうにしても限度があることが分かるのではないでしょうか。
1週間のうち、6日間、毎日8時間働いた場合で、1週間の労働時間は48時間になります。
これ以上働く場合は、1週間の労働時間が52時間、48時間を超える週は連続3回までという制限に抵触する可能性があるため注意が必要になります。
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建設業で1年変形労働時間制を導入するには?
建設業で1年変形労働時間制を導入するには3つの手続きが必要です。
- 1年単位の変形労働時間制について労使協定を締結する。
- 1年単位の変形労働時間制について就業規則に規定する。
- 労使協定と就業規則を所轄の労働基準監督署に届け出る。
一つ一つ解説します。
1年単位の変形労働時間制について労使協定を締結する
労使協定は使用者と労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者との間で締結します。
労使協定で決める項目は次のとおりです。
- 対象労働者の範囲
- 対象期間(1か月を超え1年以内の期間)及び起算日
- 特定期間
- 労働日及び労働日ごとの労働時間(勤務カレンダー)
- 労使協定の有効期間
勤務カレンダーは、1年分を定めるのが原則ですが難しい場合は、最初の1か月分について先行して決めた上で、2か月目以降については、その月の30日前に定めるという形で対応することも可能です。
この場合でも、月ごとの労働日数と労働時間数は協定締結時に決めなければなりません。
1年単位の変形労働時間制について就業規則に規定する
常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、1年単位の変形労働時間制を採用する旨を就業規則に定め、所轄の労働基準監督署へ届出が必要になります。
常時10人未満の場合
常時10人未満の場合でも、1年単位の変形労働時間制を運用するには、労働時間・休日のルールをあらかじめ明確にしておくことが重要です。労働契約書、労働条件通知書などへ明記をすることのほか、就業規則に規定されているとよりよいでしょう。
個別の状況により必要な整備は変わるため、不安がある場合は専門家に確認することをおすすめします。
労使協定と就業規則を所轄の労働基準監督署へ届出
1年単位の変形労働時間制を導入する場合、労使協定を締結したうえで、所轄の労働基準監督署へ届出を行います。一般的には、次の資料を提出します。
下記の書類を所轄の労働基準監督署へ届出ます。
- 1年単位の変形労働時間制に関する労使協定書(任意様式)
- 1年単位の変形労働時間制に関する協定届(様式)
- 労働時間年間カレンダー(勤務割表・任意様式)
- その他、就業規則に1年単位の変形労働時間制を導入する旨の記載が必要です。

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建設業で1年変形労働時間制を導入する際の注意点
1年単位の変形労働時間制を導入しても、時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金の支払い義務がなくなるわけではありません。
法定労働時間は、原則として1日8時間・1週40時間です。
ただし、1年単位の変形労働時間制では、あらかじめ適法に作成した勤務カレンダー(労使協定等で定めた各日・各週の所定労働時間)に基づき、日や週によって労働時間を長く又は短く設定することができます。これを所定労働時間と呼びます。
1日の割増賃金の考え方
法定労働時間である1日8時間に対して、例えば1日9時間働いた場合、法定労働時間に対して超えている1時間が割増とは限りません。ポイントは次のとおりです。
あらかじめ定めた各日の所定労働時間を超えて働かせた部分は、時間外労働となり、割増賃金が必要になります。下記が参考例です。
- その日の所定労働時間を8時間としている日に9時間働かせた場合、超えた1時間は割増賃金の対象となります。
- その日の所定労働時間を9時間としている日に9時間働かせた場合、法定労働時間である8時間を超えた1時間は割増賃金の対象となりません。
1週の割増賃金の考え方
対象期間(1年など)を通して、法定労働時間の総枠(40時間×対象期間の暦日数÷7)を超えて働かせた部分についても、未精算の時間外があれば、最終的に割増賃金の支払いが必要になります。
1週の労働時間についても、その週の所定労働時間の定め方と実際の労働時間を照らし、時間外労働に当たる部分があれば割増賃金が必要になります。
- 1週の所定労働時間を40時間としている週に48時間働かせた場合、超えた時間は割増賃金の対象となります。
- 1週の所定労働時間を48時間としている週に48時間働かせた場合、週の法定労働時間である40時間を超えた8時間は割増賃金の対象となりません。
対象期間の総枠と上限の考え方
1年単位の変形労働時間制においては、対象期間に応じた上限時間の範囲内で総枠を設定します。この総枠は、変形労働時間制を設定する際の各日の合計時間とはなりますが、法定労働時間である1日8時間、1週間40時間のその対象期間における合計が上限時間となります。この上限時間を超えると法定労働時間の総時間を超えることになるので原則は不可となります。
なお、対象期間は1ヶ月を超え、1年以内の期間に限ります。3ヶ月、半年などの対象期間とすることも可能です。
| 対象期間 | 所定労働時間の総枠の上限 |
| 1年(365日) | 2085.71時間 |
| 6ヶ月(183日) | 1045.71時間 |
| 4ヶ月(122日) | 697.14時間 |
| 3ヶ月(92日) | 525.71時間 |
この計算は下記の方法で算出されます。
対象期間における所定労働時間総枠 ≦ 40時間 x 対象期間の歴日数/7
これを1年365日にあてはめると下記のようになります。
40時間 x 365 / 7 = 2085.71時間(上限時間)
休日日数の考え方
対象期間における休日日数は、1日の所定労働時間が何時間であるかにより変わってきます。1年単位の変形労働時間制は1日に働くことができる法定労働時間である8時間を時期により増減して調整をしますが、平均すれば上限が8時間であることに変わりはありません。
従って、1日の所定労働時間が何時間であるかにより、休日日数が決まってきます。
必要な年間休日日数 = (1日の所定労働時間x7日ー40時間)/(1日の所定労働時間x7日)x365日
上記が計算方法ではありますが、1日の所定労働時間により休日日数は決まってきますので簡易な理解としては下記の表のとおりとなります。
| 1日の所定労働時間 | 必要な年間休日日数 | |
| 1年が365日の場合 | 1年が366日(閏年)の場合 | |
| 8時間00分の場合 | 105日 | 105日 |
| 7時間45分の場合 | 96日 | 97日 |
| 7時間30分の場合 | 87日 | 88日 |
上記は概算の考え方で、所定休日・法定休日の設計や勤務カレンダーで変わってきます。
最終的には年間カレンダーと総枠で確認するようにしてください。
まとめ
建設業で繁忙期、閑散期がある業種の場合は、1年単位の変形労働時間制の採用を検討するとよいでしょう。
この場合、1年間の平均労働時間が1週40時間となるように勤務カレンダーを作成しなければなりませんし、シフト作成ルールも遵守しなければなりません。
導入に当たっては、就業規則や労使協定、そして変形労働時間制のカレンダー作成が必要でもありますので、社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けるとスムーズでしょう。。
当事務所は、静岡県の行政書士と社会保険労務士の事務所であり、建設業者の建設業許可取得や社会保険の加入手続きや労使問題をサポートする専門家です。
静岡県内の建設業者様で、1年単位の変形労働時間制の導入や、就業規則・労使協定、36協定の整備で不安がある場合はご相談ください。






