建設工事を請け負う際は、建設業許可を受けた業種の工事のみ請け負うのが基本です。しかし、許可を受けた業種以外の工事も同時に施工する必要が生じることもあります。
このような場合は、軽微な建設工事または、附帯工事として請け負うことができます。
ではどのような工事なら、附帯工事として請け負うことができるのか解説します。
このような方に向けた記事です
- 附帯工事とは何かを知りたい方
- 附帯工事と軽微な建設工事の違いを知りたい方
- 附帯工事に該当するかどうかの判断基準を知りたい方
- 附帯工事を施工する場合の注意点を知りたい方 等
建設業許可がなくても施工できる工事とは?
建設業を営むためには、国土交通大臣または都道府県知事の建設業許可を取得するのが原則です。
ただ、例外的に建設業許可がなくても施工できる工事もあります。次の2つの工事です。
- 軽微な建設工事
- 附帯工事
軽微な建設工事
軽微な建設工事とは、下記の条件に該当する工事の事を指します。
建築一式以外の工事の場合
- 工事一件の請負代金の額が500万円に満たない工事
※土木一式工事と、専門工事27業種の合計28業種のことです。
建築一式工事の場合
- 建築一式工事については、1500万円に満たない工事又は延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事

金額や工事面積が小さいから軽微な建設工事と呼ばれるんですね。



はい、この条件までは建設業許可はなくても建設工事を請け負うことが出来ます。



この金額は税込なのでしょうか?支給材料代は含みますか?



ご質問の点は押さえておきたいポイントです。
消費税、支給材料代込みでの金額となります。要注意です。


附帯工事
附帯工事とは、許可を受けた建設業の建設工事を請け負った場合に、その工事に附帯する他の建設業の建設工事も請け負うことができるというものです。
建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事を請け負う場合においては、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事を請け負うことができる。
(建設業法4条)
附帯する工事とは
また、静岡県の建設業許可の手引きでは下記のように示されています。
条件1 | 条件2 | 条件3 | 条件4 | 例示 |
主たる工事の施工 | をするために必要な | 他の従たる建設工事(で) | ー | 石工事業者が石垣を築造するにあたって基礎部分の掘削やコンクリート工事を施工する場合 |
をすることにより必要が生じた | 独立の使用目的に供されるものではないとされる工事 | 管工事業者が、既存の建物に冷暖房工事の配管をするに当たって、壁体をはつったり、熱絶縁工事をしたり、施工後に内装仕上工事をする場合 |
主たる工事が存在し、それを完成させるために必要な工事で、主たる工事と別個の独立の使用目的とはならない工事。という事になります。
主か従か、必要か不要かはわかりやすいところかと思います。しかし、「独立の使用目的」とならないかという点には注意が必要です。
附帯工事の具体的説明
この記事では、附帯工事についてさらに詳しく解説します。
建設工事は許可を受けた業種の工事のみ請け負うのが原則ですが、それでは、工事の施工において不便なこともあります。
例えば、窯業系サイディング外壁の施工の際は、同時に、外壁同士の境目や外壁とサッシの隙間にシーリング(コーキング)を打つ必要があります。
窯業系サイディング外壁の施工は、タイル・れんが・ブロック工事業の許可が必要です。
一方、シーリングの打設は、防水工事業の許可が必要です。
建設業許可を受けた業種以外の工事を一切請け負えないとすると、タイル・れんが・ブロック工事業の許可のみ有する建設業者は、シーリングの打設ができないことになります。
これでは、中途半端な状態で工事を切り上げなければならないことになり、施主にとっても都合が悪いと言えます。工事完成前に雨が降ると、雨漏りにつながり、建物にダメージを与えてしまいかねません。
そこで、請け負った工事と関連する工事なら、許可の有無、また、軽微な建設工事に該当するかどうかに関わらず、請け負うことができるとされています。
その際に請け負う工事のことを附帯工事と言います。
附帯工事の2つの種類
附帯工事には、2つの種類があります。
- 主な建設工事の機能を保全したり十分な能力を発揮するために必要な工事
- 主な建設工事の施工に際して余儀なく必要となる工事
主な建設工事の機能を保全したり十分な能力を発揮するために必要な工事とは、「主たる建設工事を施工するために必要を生じた他の従たる建設工事」と言われることもあります。
上記で説明したような窯業系サイディング外壁の施工と同時に行うシーリングの打設が代表例です。
主な建設工事の施工に際して余儀なく必要となる工事とは、「主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事」と言われることがあります。
代表的なのは、電気配線を行う際の内装工事が挙げられます。
電気配線は、電子工事士の資格と電気工事業の建設業許可を持っている電気工事店(もしくは登録電気工事業者)が施工するのが原則ですが、電気配線だけやって、配線をむき出しにしたまま、終わらせることは、基本的にありません。
電気配線の方法には、隠蔽配線とモール配線がありますが、いずれの方法で施工するにしても、内装工事が必要です。
内装仕上げ工事を行うには、本来なら、内装仕上工事業の建設業許可が必要です。
ただ、電気工事店が電気配線工事の附帯工事として内装工事も行ってよいということです。
附帯工事に該当するかどうかの要件
附帯工事に該当するかどうかは、総合的に判断しますが、次の要件を満たすことがポイントです。
- 主たる工事が存在していること
- 主たる工事の一連の工事、一体の工事と言えること
- 土木一式工事、又は建築一式工事に該当しないこと
一つ一つ確認しましょう。
主たる工事が存在していること
附帯工事として施工するには、メインとなる主たる工事を請け負っていることが前提になります。
主たる工事の一連又は一体の工事と言えること
主たる工事を施工するうえで、附帯工事が切り離せない関係にあることが条件です。後で他の業者に依頼しても問題ないという工事内容の場合は、附帯工事に当たりません。
例えば、ベランダ防水とベランダ屋根の取り付け工事は、同時にやった方が効率は良いですが、同じ業者が請け負う必要はありません。
そのため、ベランダ防水の工事を請け負った防水工事業者が、ベランダ屋根の取り付け工事を附帯工事として行うことはできません。
土木一式工事又は建築一式工事に該当しないこと
附帯工事が、土木一式工事、又は建築一式工事に該当するという事態は考えられません。
それならば、すべて、土木一式工事、又は建築一式工事として施工する形になるはずだからです。
また、主たる工事が土木一式工事、又は建築一式工事の場合は、附帯工事もその中に含まれるのが一般的です。
附帯工事として請け負う場合のポイント
附帯工事として請け負う場合のポイントとなる条文は下記となります。
建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事に附帯する他の建設工事(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事を除く。)を施工する場合においては、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における当該建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるものを置いて自ら施工する場合のほか、当該建設工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に当該建設工事を施工させなければならない。
建設業法第二十六条の二
ここに記載されている内容について、下記でご説明します。
現場の主任技術者が必要
ここで言う「専門技術者」とは、上記条文中の「第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者」であり、すなわち営業所技術者となり得る技術者の事になります。該当する資格又は実務経験を有することが求められます。
これらの者が現場で配置される場合には主任技術者となります。
もしも、自社内に主任技術者の資格を有している者がいない場合は、附帯工事について建設業の許可を受けている専⾨⼯事業者に工事を依頼しなければなりません。
ここまでの状況を下記の表へ整理してみます。
附帯工事の請負金額 | 附帯工事の建設業許可 | 専門技術者の配置 | 施工 |
500万円未満 | なし | なし | 自社可 |
500万円以上 | なし | あり | 自社可 |
あり | あり | 自社可 | |
なし | なし | 許可を持つ建設業者が施工 |
施工の専門資格が必要
建設業法とは別に、建設工事の施工の際は、専門の資格が必要になる工事もあります。
例えば、電気工事の作業を行う際は、電気工事士の資格が必要とされています(電気工事士法3条)。
附帯工事として施工する場合でも、こうした資格による規制を受けるので注意しましょう。
例えば、内装仕上げ工事を請け負った内装業者が、コンセントの位置の変更を依頼された場合は、電気工事士の資格を持った人がその工事を行わなければなりません。
附帯工事だから資格なしでやってよいということにはならないので注意しましょう。
資格等が必要な工事の例
電気工事、消防設備工事、解体工事、他
まとめ
建設工事を施工するにあたっては、許可を受けた業種の工事のみ請け負うのが基本ですが、工事内容によっては、許可を受けていない業種の工事も、附帯工事として施工することができます。
実際に現場では、許可を受けた業種の工事以外の工事も、意識せずに施工していることも少なくないと思います。
大きな仕事を請け負った時は、附帯工事に当たるかどうかをめぐって問題になることもあるため、請け負うことが多い工事内容に関連する業種については建設業許可を取得しておくのが無難です。
当事務所は、静岡県の行政書士と社会保険労務士の事務所であり、建設業者の建設業許可取得をサポートする専門家です。
静岡県内の建設業者様で、建設業許可取得に関してお悩みのことがあれば、どのようなことでもご相談ください。