静岡県知事建設業許可申請に必要な専任技術者の実務経験証明書について解説
当事務所は建設業者の外部支援事務所として取り組みを行っている社会保険労務士と行政書士の事務所です。代表の成岡寛人と申します。
事務所所在地は静岡県静岡市駿河区です。
主に建設業者が必要とする各種手続き業務を承り、また、労働関係法令をふまえた労務相談等でご活用いただいています。具体的には、建設業許可、更新、決算変更届、経営事項審査、入札、労災特別加入、社会保険、労働保険、雇用保険、その他、建設業許可業者が必要とする各種手続きと、それに付随するアドバイス業務を行っています。
そんな建設業関係手続きの専門家が、建設業許可業者として事業を行い、継続する上で必要な手続きの代行を承りますためご案内いたします。
代表の成岡寛人です。よろしくお願いします。
当事務所では建設業支援を打ち出しています。
当事務所はこのように建設業支援事務所として取り組んでいる建設業許可関連の専門家です。
建設業に関する手続きは安心してご相談ください。
専任技術者に必要な実務経験証明書のご案内
建設業許可申請を行う中で、専任技術者を置く必要があります。この専任技術者の置くためには、原則は実務経験を証明することが建設業法の中で定められております。そのため、実務経験証明書という書類が求められることがあります。これはどのような書類なのでしょうか、どういう場合に必要なのでしょうか。このような疑問点に対して解説していきます。
このような方に向けた記事です
- 実務経験証明書がどのようなものなのかを知りたい方
- 実務経験証明書が不要な場合を知りたい方
- 実務経験証明書の証明書類がどのようなものか知りたい方
- 静岡県知事許可の場合はどのようなルールで運用されてるのかを知りたい方 等
専任技術者の実務経験証明書とは?
実務経験証明書の役割と目的
建設工事における請負契約を適切に締結し、その履行を確保するためには、建設工事に関する専門知識が欠かせません。請負契約に関連する見積もりや入札、契約の締結などの業務は各営業所が主に行うため、建設業の許可を受けて営業を行おうとする全ての営業所には、申請する業種に応じた国家資格や実務経験を持つ技術者を専任で配置することが求められます。これを専任技術者と呼びます。
建設業の許可を受けて営業を行おうとする全ての営業所に必要なこと
下記のすべてを満たす必要があります。
- 申請する業種ごと
- 国家資格や実務経験を持つ技術者
- 営業所ごとに専任で配置
この専任技術者となろうとする方が、知識や経験において十分に備えていることを証明するために実務経験証明書が建設業許可申請上で求められています。そのために用意をしていくことになります。
豆知識:技術者の専任とは?
「専任」とは、その営業所に常勤し(テレワークを行う場合も含む)、その職務に専念して従事することを意味します。したがって、雇用契約などを通じて事業主体と継続的な関係を保ち、休日や勤務の必要がない日を除き、通常の勤務時間中はその営業所で勤務し、建設工事に関する請負契約の適切な締結およびその履行を確実に行う必要があります。
原則「専任」と認められない場合
- 技術者の住所又はテレワークを行う場所の所在地が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能である者
- 他の営業所において、専任を要する職務を行っている者
- 建築事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士等、他の法令により特定の事務所等において専任を要することとされている者(ただし、建設業において専任を要する営業所が他の法令により専任を要する事務所等と兼ねている場合において、その事務所等において専任を要する者は「専任」として取り扱います。)
- 著しく低い報酬・賃金(月額12 万円を目安)で雇用されている者(正当な理由がある場合を除く。)など
実務経験証明書とはどのような証明書なのか
下記が実務経験証明書です。様式第九号と呼ばれる書面に専任技術者となる方の実務経験を記載していきます。ここには記入例が書かれていますので書き方も含めてご参考にされてください。
専任技術者となりたい業種、それに対応する実務経験年数と実務経験の内容、それを証明する証明者がいるという所がポイントです。つまり、専任技術者となろうとする方の過去について資料で説明し、それを証明する方が必要だということになります。詳しくは追って説明していきます。
実務経験証明書の記載例
実務経験証明書の記載工事にかかる確認資料
上記の実務経験証明書に記載された内容が事実であることを確認するために確認資料を添付します。
確認資料には下記のものがあります。
いずれかの写し
ア: 契約書
イ: 注文書、発注書又は発注証明書
ウ: 請求書及び入金が明確にわかるもの(通帳、預金取引明細票等第三者機関が発行したもの
エ: 従前証明(下記参照)
オ: 記載した対象業種に係る許可期間分が確認できる建設業許可通知書の写し又は建設業許可申請書等(受付印があるもの)
注意事項
・経験期間における地位、常勤性、請負実績を証明する書類については、それぞれ証明期間が一致し、必要経験期間分提出をすることが必要です。
建設業許可の手引きより
・記載内容から建設工事の請負であることが明瞭に読み取れるものを提出してください。
・「見積書」や「明細書」のみでは認められません。
・内容が不明確な場合や疑義がある場合は、「見積書」、「仕様書」又は図面等の補強資料の提出を求めます。
・契約書、注文書、請求書等の裏付資料は当時の資料で確認します(申請用に新たに作成し直した資料は認めません)。また、請求金額と入金額とが異なる場合は、相違の原因となる資料(他工事の請求書、支払明細書等)の写しを提出してください。
従前証明を行った実務経験証明書
過去に専任技術者となったことがある方で、下記に該当する場合は、その証明をすることのみで実務経験の証明とみなされます。
従前の許可で、様式第8号及び様式第9号を提出し営業所の専任技術者の証明を行ったものについては、既に提出した様式第8号及び第9号の控え又は様式第1号及び別紙四(受付印がないもの)の控え若しくは別紙四(受付印があるもの)の控えの写し3部(正本1部、副本2部)を提出することで、様式第9号の作成を省略することができます。この場合、様式第8号を新たに3部(正本1部、副本2部)作成し、既に提出した様式第8号及び様式第9号の写し又は様式第1号及び別紙四(受付印がないもの)の控え若しくは別紙四(受付印があるもの)の控えの写しを証明書類として添付することで、営業所の専任技術者の証明を行うことができます。
建設業許可の手引きより
専任技術者の証明を2度行うことを省略し得るルールが静岡県知事許可にはある。
実務経験期間在籍の確認資料
実務経験証明書の「実務経験年数」欄に記載した実務経験期間において、専任技術者となろうとする方(被証明者)が証明者の会社に在籍したいたことを確認するため「厚生年金被保険者記録紹介回答票」等を添付します。具体的には下記の書類等です。
いずれかの写し
ア: 健康保険被保険者証
イ: 厚生年金被保険者記録照会回答票又は厚生年金加入期間証明書
ウ: 法人税確定申告書の別表一、役員報酬手当及び人件費等の内訳書
エ: 雇用保険被保険者離職票-1
オ: 所得証明書及び源泉徴収票
カ: 所得税確定申告書の第一表・第二表及び決算書
キ: 住民税特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用)
実務経験証明書はどのような時に必要なのか
建設業許可申請の際に実務経験証明書は必ず用意しなければならないのでしょうか。答えは、場合によります。専任技術者となろうとする方の状態により、必要なこともあれば、必要ない事があります。それぞれの場合について確認をしていきたいと思います。
※実務経験の証明自体はいかなる場合も必要です。
専任技術者の実務経験要件
専任技術者になろうとする方の実務経験は下記の3パターンに別れます。それぞれ異なる方法で証明されていくことになります。
イ: 指定学科+実務経験
ロ: 10年以上の実務経験
ハ: 国家資格等
結論を申し上げると、イとロは実務経験証明書が求められます。ハは国家資格者証等を提出することにより、実務経験証明書の提出が求められない場合と、求められる場合に分けられます。このハのどちらに該当するかは建設業許可の手引き等で明示されているのでそこで確認をしていきます。
実務経験証明書の要否
必要:イ、ロ、ハ(明示された一部)
不要:ハ(明示された一部)
上記はイ、ロ、ハは建設業法上の条文の記載に対応しています。参考として建設業法でどのように書かれているのか下記にてご案内いたします。
(許可の基準)
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。
建設業法第7条1項2号
上記の7条1項2号の条文の下にイ、ロ、ハと繋がりますのでご覧ください。
イ
建設業法第7条1項2号イ
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による実業学校を含む。第二十六条の七第一項第二号ロにおいて同じ。)若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は同法による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。同号ロにおいて同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。同号ロにおいて同じ。)を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ
建設業法第7条1項2号ロ
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
ハ
建設業法第7条1項2号ハ
国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者
※特定建設業においては指導監督的実務経験というものがありますがここでは省略します。
実務経験のパターン別の説明
上記で3パターンの実務経験の証明方法があることが分かりました。ここではそれぞれのパターンについてそれらがどのような意味合いであるのか、また、どのように証明していくものなのか説明をしていきます。
全般的に共通する事として、ここで説明する実務経験とは、建設業許可申請で取得したい各業種ごとの実務経験期間の積み上げとなります。1つの実務経験の期間は、1つの業種にしか使用することができません。
手引きには下記のように記述されていますのでご注意ください。
実務経験で、2業種以上申請する場合は、1 業種ごとに10 年以上の経験が必要です。期間を重ねることはできません(2業種を申請する場合は20 年以上必要です。)
静岡県建設業許可の手引きより
実務経験の期間は重複して使うことはできない。
イ 指定学科+実務経験のパターン
指定学科と実務経験の2つを組み合わせる必要があるという意味合いになります。指定学科とは建設業法施行規則で定められた学科であり、実務経験とはその指定学科に応じた必要なリズム経験の年数のことになります。
指定学科の説明(学歴要件)
建設業法施行規則第1条に全29業種に対応する学科が記載されています。この業種と卒業した学校の学科が対応している場合は、指定がかと認められます。逆に言うと、学科として認められていない場合は、建設業許可申請上は指定学科の卒業とはみなされず、イには該当しないという扱いになります。
この指定学科を学歴要件と呼ぶことがあります。
許可を受けようとする建設業 | 学科 |
・土木工事業 ・舗装工事業 | 土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む。以下この表において同じ。)、都市工学、衛生工学又は交通工学に関する学科 |
・建築工事業 ・大工工事業 ・ガラス工事業 ・内装仕上工事業 | 建築学又は都市工学に関する学科 |
・左官工事業 ・とび・土工工事業 ・石工事業 ・屋根工事業 ・タイル・れんが・ブロック工事業 ・塗装工事業 ・解体工事業 | 土木工学又は建築学に関する学科 |
・電気工事業 ・電気通信工事業 | 電気工学又は電気通信工学に関する学科 |
・管工事業 ・水道施設工事業 ・清掃施設工事業 | 土木工学、建築学、機械工学、都市工学又は衛生工学に関する学科 |
・鋼構造物工事業 ・鉄筋工事業 | 土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
・しゆんせつ工事業 | 土木工学又は機械工学に関する学科 |
・板金工事業 | 建築学又は機械工学に関する学科 |
・防水工事業 | 土木工学又は建築学に関する学科 |
・機械器具設置工事業 ・消防施設工事業 | 建築学、機械工学又は電気工学に関する学科 |
・熱絶縁工事業 | 土木工学、建築学又は機械工学に関する学科 |
・造園工事業 | 土木工学、建築学、都市工学又は林学に関する学科 |
・さく井工事業 | 土木工学、鉱山学、機械工学又は衛生工学に関する学科 |
・建具工事業 | 建築学又は機械工学に関する学科 |
※類似学科の場合は、置き換えて該当する場合があるので、詳しくは建設業許可の手引きで確認をしてください。
指定学科を卒業している場合の実務経験年数
上記の指定学科を卒業してる場合、求められる実務経験年数は下記のようになります。
学校種別 | 学科等 | 必要実務経験年数 |
大学、短期大学 | 学部、専攻科、別科 | 指定学科卒業 + 実務経験3年 |
高等専門学校 | 学科、専攻科 | |
専門学校 | 高度専門士課程 | |
専門士課程 | ||
専修学校専門課程 | 指定学科卒業 + 実務経験5年 | |
高等学校 | 全日制、定時制、通信制、専攻科、別科 | |
中等教育学校 | 平成10 年学校教育法の改 正により創設された中高一 貫教育の学校 |
該当の学校、学科を卒業していても実務経験は3年又は5年が必要ということになります。
ロ 10年以上の実務経験のパターン
イの指定学科(学歴要件)に該当せず、また、ハの国家資格を保有していない場合に、ロの10年以上の実務経験のパターンとなります。
ハ 国家資格保有等のパターン
このハでいうパターンには、指定された国家資格保有の場合と、国土交通大臣がイ又はロと同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定したものの2つに分かれます。
ハのパターンは2タイプに分かれる
- 指定された国家資格
- 国土交通大臣がイ又はロと同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定
※原則は①であり、②は例外の扱いになりますので、ここでは省略します。
①の指定された国家資格は、建設業の手引きの中に記載がされています。下記が参考例です。
国家資格等一覧表
ここには、建設業法施行規則で定められた国家資格等が記載されています。該当の国家資格等を保有している場合は、ハに該当し、国家資格等の保有者として実務経験を証明する権利があることとなります。
この国家資格等での証明の場合は、実務経験が求められないものと、求められるものの2パターンに分かれます。つまり、国家資格等を保有しているだけで経験がなくても実務経験があるとみなされるものと、国家資格等を保有していても指定された実務経験の期間を証明できなければ、専任技術者となれないこととなります。また、この実務経験の期間は資格等取得後である必要があり、対応する必要書類のほか、実務経験証明書を用意して証明していきます
- 実務経験を求められない場合
-
・国家資格等の保有を証明することで実務経験の証明は不要
- 資格等取得後の実務経験を求められる場合
-
・国家資格等の保有+一覧表に記載された実務経験年数の証明が必要
・実務経験の証明には、必要書類のほか、実務経験証明書が必要
・注意点としては、資格取得後の実務経験期間であることが求められる
実務経験を求められない国家資格を保有していれば、それだけで完了ということになります。許可申請手続き上は、この国家資格要件を目指して資格を取得される場合もあるため、実務経験不要のパターンであることが多いです。
その他:海外での工事の実務経験
海外での工事の実務経験を有する方で、国土交通大臣の個別審査を受け、認定を受けた場合は専任技術者となり得ます。しかし、該当することは難しいので、基本的には上記のイ、ロ、ハで証明していく方法を考えるのがよろしいでしょう。
実務経験該当の確認方法
3パターンの実務経験の確認方法があることが分かりました。そして、ハの国家資格等保有者においても、実務経験が不要な場合と、必要な場合がありました。
これをどの手順でどのように確認していくべきなのか流れで説明いたします。
ご自身が保有している国家資格等が建設業許可申請で求める資格等に該当するのかの付け合わせを行います。建設業の手引きの中の一覧表でご確認ください。
該当している場合は、実務経験が必要なのか、必要な場合は何年必要なのかを確認してください。不要な場合は、それにて実務経験の証明に関することは完了です。証明する国家資格証等を保有していることを確認してください
該当しない場合は、STEP2へ進んでください。
ハ(国家資格等)にに該当しなかった場合は、指定学科に該当するかの確認をしてください。
該当する場合は、3年又は5年どちらの実務経験が必要になるのかの確認をしてください。
該当しない場合は、STEP3へ進んでください。
上記のハ(国家資格等)およびイ(指定学科)のどちらにも該当しない場合は、ロの10年以上の実務経験にて証明することになります。
実務経験を証明していくことは過去の書類を集めたり、それが間違いないことを証明者へお願いすることが出てくるので、なかなかスムーズに進まなかったり、それが理由で建設業許可申請を断念することになることもありえます。
従いまして、できる限り実務経験の証明は少なく済ませることがポイントです。上記のステップに従って、できるだけ実務経験の証明が不要であったり、短くなる方法を探してみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。実務経験の証明とはどのようなものであるのか、どのような場合に該当し、どのように書類を用意したら良いのかご理解いただけましたでしょうか。実際には、様々な状況により、用意の仕方が異なったり、実務経験証明書を用意する場合には、過去の様々な関係者と関わったりと、大変な作業であることには変わりはないでしょう。
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