これまでの流れ
もともとは「技術」と「人文知識・国際業務」の在留資格は分かれていましたが、平成26年(2014年)の入管法改正により、この二つが統合されて、「技術・人文知識・国際業務」という一つの在留資格が規定されました。
在留資格(技術・人文知識・国際業務)の特徴
条文
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項、芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで及び企業内転勤の項から興行の項までの下欄に掲げる活動を除く。)
入管法別表第一の二より
この条文には3種類の活動内容が組み込まれていることが特徴です。
それぞれの内容とご説明はこちらです。
3種類の業務内容
① 自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務
「自然科学の分野に属する」とは、科学の分野を自然科学と人文科学の二つに分類した場合における自然科学の分野に属する技術又は知識のことをいいます。
② 人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務
「人文科学の分野に属する」とは、科学の分野を自然科学と人文科学の二つに分類した場合における人文科学の分野に属する技術又は知識を意味し、社会科学の分野に属する技術又は知識を含みます。
③ 外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務
「外国の文化に基盤を有する」とは、外国のそれぞれの国の文化に根差すということになります。
「思考又は感受性」とは、考え方や感覚を意味します。
また、活動内容はこれらの内の1つだけではなく、①、②及び③の一部又はすべてを行うことが可能です。
背景としては、実際に日本で働く外国人の業務を見た場合、自然科学の分野の知識と人文科学の分野の知識の双方を必要とする業務も多く存在する事、また、外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務を同時に行うことは勤務の中で行うことも自然にあり得ることを考慮して活動内容を幅広く受け入れているのがこの在留資格の特徴です。
必要な条件
一 自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を習得していること。(例外あり)
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
解説:大学には海外の大学、日本の短大、大学、大学院を含みます。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了したこと。
解説:専修学校は法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限ります。
ハ 十年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
解説:十年以上の実務経験を立証できる必要があります。
二 外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。
イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。
解説:大学を卒業の場合は通訳が能力があると広く解釈されています。
三 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
解説:外国人であることを理由として報酬額を下げてはいけません。
就業できるお仕事の事例
下記のお仕事が典型的な事例として公表されています。
「技術・人文知識・国際業務の在留資格の明確化等について」より。
- オンラインゲームの開発案件に関するシステムの設計、総合試験及び検査等の業務に従事するもの
- ソフトウェアエンジニアとしてコンピュータ関連サービスに従事するもの
- コンピュータ・プログラマーとして、開発に係るソフトウェアについて顧客との使用の調整及び仕様書の作成等の業務に従事するもの
- 本邦の外資系自動車メーカーに派遣されて技術開発等に係るプロジェクトマネージャーとしての業務に従事するもの
- 取引レポート、損益データベース等の構築に係る業務に従事するもの
- 建設技術の基礎及び応用研究、国内外の建設事情調査等の業務に従事するもの
- 土木及び建築における研究開発・解析・構造設計に係る業務に従事するもの
- CAD及びCAEのシステム解析、テクニカルサポート及び開発業務に従事するもの
- 研究所において情報セキュリティプロジェクトに関する業務に従事するもの
- 語学教師としての業務に従事するもの
- 外航船の用船・運航業務のほか、社員の教育指導を行うなどの業務に従事するもの
- 会社の海外事業本部において本国の会社との貿易等に係る会計業務に従事するもの
- 語学を活かして空港旅客業務及び乗り入れ外国航空会社との交渉・提携業務等に従事するもの
- 本国のIT関連企業との業務取引等におけるコンサルタント業務に従事するもの
- 本国と日本との間のマーケティング支援業務として、市場、ユーザー、自動車輸入動向の調査実施及び自動車の販売管理・需給管理・現地販売店との連携強化等に係る業務に従事するもの
- 国際線の客室乗務員として、緊急事態対応・保安業務のほか、乗客に対する母国語、英語、日本語を使用した通訳・案内等を行い、社員研修等において語学指導などの業務に従事するもの
在留期間
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に伴う在留期間は下記です。
5年、3年、1年又は3月
報酬の額
平成11年の基準省令の改正前まで
基準省令の制定当初は、当時の「人文知識・国際業務」の在留資格に係る基準として、外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合についての報酬は、当該業務が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務という通常の日本人が行うことができない業務であることから、「月額25万円以上の報酬を受ける事」が要件として規定されていました。
改正後
人文科学の分野に属する知識を必要とする業務に従事しようとする場合と同様に「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」に改正されました。
そして、平成26年の改正により、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格となった後もこの考え方を継承しています。